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【アート×企業】インタビューシリーズvol.1クロスライフ博多柳橋

マッチング

Artist Cafe Fukuokaでは、福岡にゆかりのあるアーティストと企業のマッチングを促進し、新たな出会いと販路拡張につなげるためのサポート事業を行っています。本連載ではその実装事例をピックアップしてご紹介します。
第一弾は、クロスライフ博多柳橋ロビーの作品展示に向けたマッチングの取り組みです。

「ARTISTS in CROSS Life」クロスライフ博多柳橋との事例

福岡市中央区春吉に位置するクロスライフ博多柳橋が目指されたのは、地域との深い繋がりを持つ空間でした。Artist Cafe Fukuoka(以下ACF)は、これまで4回にわたるマッチング事業を通じて、福岡にゆかりのあるアーティストを公募し、ロビーでの展示をサポートする取り組みを行っています(2024年12月現在)。

同館とACFとの取り組みについて、クロスライフ博多柳橋のセールス&マーケティング課 スーパーバイザー / 地域共創担当の矢野こころさんにお話を伺いました。インタビュアーは、ACFアドバイザーで株式会社ダイスプロジェクトの岸本拓郎さんです。

地域の魅力を発信するために

岸本:   なぜアーティストとのコラボレーションに興味を持たれたのですか?

矢野:   まず、クロスライフのブランド自体が地域志向であったことです。私たちのホテルで地域の魅力を発信し、お客様がそれに出会えるようにすること。そして興味を持ったら実際に街へ出てみたくなるような流れを作りたいと考えていました。

そして、そのような地域との取り組みの可能性を「アート」から探ろうとしているときに、福岡市がFukuoka Art Nextというスローガンを掲げ様々な活動を行っていることを知り、ACFを紹介していただきました。

岸本:   ACFに相談をする前に、アーティストを独自で探してみようという動きはありましたか?

矢野:   当社のエリアのホテルでは、アーティストの選定や交渉などをホテルの担当者がすべて行っていたケースもありました。その際に、個人のコネクションや選定に頼ってしまうことが課題となっていたため、専門家の協力を必要としていました。

ACFのマッチング事業を通して、ホテルが求めるイメージを一緒にすり合わせながらアーティストの選定をできるようになりました。ホテルとアーティストの双方が安心感をもって取り組めているように感じています。

公募でアーティストを選定

岸本:   ロビーの展示に参加するアーティストは、ACFとの公募(※1)によって選定されたとお聞きしました。展示が実現するまでに印象的だったことはありますか?

(※1)本プロジェクトでACFは、クロスライフ博多柳橋のロビーで展示を希望するアーティストを一般公募で募りました。ACF側で受付フォームの準備や告知・広報を行い、これまで累計で90名*ほどの応募を集めました。その後、クロスライフとACFが一緒になって選定作業を進め、各回ごとの展示作家を決定しています。*希望展示会場の重複を含めた人数

矢野:   公募を出す前、社内からは応募してくれるアーティストが本当にいるのか不安視する声があがりました。ただ実際に公募を出してみると想像以上に反響があり、作品を見てもらいたいと考えているアーティストが多いことを肌で感じました。

岸本:   ACFと2年以上連携してみた感想はいかがですか?

矢野:   今回でプロジェクトは4回目になるのですが、毎回しっかり連携していただき、非常にやりやすいですね。どうしても私たちはアートに関しては素人なので、ホテルの空間に合ったアーティストとのスムーズな提案から、設営・撤収のフォローまでしていただけて、とてもありがたく感じています。

お客様やスタッフへの好影響

岸本:   お客様からの反応はありましたか?

矢野:   お客様の来館時に、最初に目に入るエントランスの印象は非常に大切で、そこにアートがあることで、より気持ちが上がると感じています。実際、お客様からアートについて質問されたり、アーティスト側もSNSのフォロワーが増えたりと、双方にいい影響が出ているようです。海外からのお客様もアートの前で楽しそうに写真を撮られているのを目にします。

岸本:   矢野さんや働いているスタッフのアートへの関心の変化はありましたか?

矢野:   お客様からの質問を通してコミュニケーションが生まれているので、フロントでは特にアートについての会話が増えており、フロントクルー側にもポジティブな影響が出ていると感じています。私自身も近くのギャラリーに定期的に通うようになり、アートへの関心が高まってきたように思います。

新たな「できること」が見つかる

岸本:   今後挑戦してみたいことはありますか?

矢野:   今後はアーティストとのコラボレーションルームなど、ロビーでの展示以外にも、福岡出身のアーティストと新しい取り組みができないか検討していきたいですね。クロスライフ博多柳橋のロビーや、クロスライフ博多天神の大浴場内にあるサイネージでは、開業時にアーティストに制作いただいた動画を放映しているので、動画を制作しているアーティストの新たな発表の場にもできればと思っています。

岸本:   作品を深く知ってもらうために、展示初期の段階でトークイベントなどを開催するのもいいかも知れないですね。

矢野:   柏木さんの展示の際は、2階のスペースでワークショップを開催していただきました。3回開催して、各回4〜5人ご参加いただきました。このスペースは通常、イベントスペースとして貸出しはしていなかったのですが、アーティストとのコラボレーションを通じて、施設の新しい活用方法も見つけられるかもしれません。

岸本:   体験の機会を提供できることで、アーティストについてより深く知ることができたり、作品への理解を深めることにつながっていくのもいいですね。サイネージやワークショップ等をコンテンツ化していくことで、アーティストとクロスライフさんどちらのPRにもなってくるような座組みが、今後つくれるといいですね。

単なるホテル以上の存在へ

岸本:   お話をお聞きして、プロジェクト全体の満足度の高さを感じることができました。これだけポジティブに取り組めた事例があると、他の企業、アーティストも自分たちもやってみようかなと感じていただけると思います。

矢野:   ACFは私たちの目線に立ってアーティストを紹介してくださるので、とてもありがたいです。私自身も社内で説明する必要があるのですが、ACFから第三者視点で選定理由を伝えていただけてとても助かっています。仮にこのサービスが有償になったとしても私はお願いすると思います。

矢野さんはACFと取り組んだこのプロジェクトを通じて、ホテルが単なる宿泊施設以上の存在になれることを改めて実感されているご様子でした。アートを通じて、自分たちのホテルがお客様、アーティスト、地域の人々をつなぐハブになる。その手応えと未来のイメージは、クロスライフの今後の可能性を拡げるものになったようです。

参加アーティストの感想

【1回目:参加アーティストの声】福田沙千代さん

プロフィール

1989生。北九州市内で幼少期を過ごす。 九州デザイナー学院を卒業後、現在は会社勤めをしながら表現の場を設けている。ここ近年は、平面、インスタレーション、絵画を制作している。https://artistdb.artistcafe.jp/fukudasachiyo/
https://www.instagram.com/p/CtbIvIOynCO/?img_index=1

クロスライフ様の展示スペースが個性的でここでしか出来ない表現ができ、見てくださった方の感想も好評で、参加できてよかったです。また海外の方も行き来するホテルロビーでの展示ということ、公募での選出ということでアーティストとして良い転機になりました。タレントの取材や、FaN weekと会期が重なっていたタイミングで取材をさせていただいたり、今までは個人的に粛々と制作していた事がたくさんの方の目に触れて、アーティストの認知が上がり、この展示をきっかけにホテルの1周年のイベントにも参加し、これがご縁で「ミライへの1minutes」(※2)にも出演できました。また、実績ができたことでお仕事等のきっかけにもなりました。
(※2)福岡地区及び長崎地区で放送されている、九州で活躍する若きアーティストを応援する TVミニ番組

【2回目:参加アーティストの声】柏木菜々子さん

プロフィール

1977年生まれ、2000年筑波大学芸術専門学群美術専攻日本画コース卒業。福岡を拠点に、福岡や関東等で発表を重ねる。『愛すべき者たちの肖像・群像』をテーマに、動物や風化した建物等を日本画で描いている。どこに居ようともゆるりと生きる、その者らしさを表現したい。
https://artistdb.artistcafe.jp/kashiwaginanako/
https://www.instagram.com/p/CzKab8qSSTH/?img_index=1

今回はホテルでの展示ということで、普段絵画との接点が全くない方にも気軽に観ていただけたことがとても良かったです。後々まで、思いがけない方からも「観たよ」というお声をいただき好評でした。宿泊客でなくても通りがかりにフラッと入ったり、カフェ利用で観られるため、敷居が低いようです。SNS用の写真も、ホテルの空間のおかげで普段よりお洒落なものが撮れ、いいね!の数が増えました。海外のお客様の目に触れる機会も嬉しいです。外の風景を取り入れた窓との兼ね合いを考えたり、お客様の動線を考えたり、英語での解説を用意したりと、ホテルならではの空間で展示するのはアーティストとしての経験値も上がったように思います。ワークショップも、不慣れながらも開催できたのはホテル側やACFのご協力あってのことです。旅先や何気ない日常の中でアートに触れて頂ける機会があるのは嬉しいことだなあと思います。

【3回目:参加アーティストの声】神園宏彰さん

プロフィール

1960年鹿児島生まれ  2006年武蔵野美術大学通信教育課程卒業。具体美術運動の流れをくむ現代美術作家。パリで松谷武判氏(具体美術メンバー)に出会い親交と影響を受け続けている。『29/7/1990`s portrait of vincent van gogh』は、フランス・アルル・ゴッホ財団美術館に収蔵されている。
https://artistdb.artistcafe.jp/kamizonohiroaki/
https://www.instagram.com/p/C5QNdBer8wf/

展示のサポート、展示空間の提供は非常に有り難いものでした。スタイリッシュなホテルなので展示した作品のイメージも向上してとても評判が良かったです。いわゆるインスタ映えもしてフォロワーも増えました。また偶然にも会期の終盤にFaN week 2024と重なりフライヤーに掲載されたのは良かったです。展示が公的に記録されました。ホテル側にもメリットというか恩返しが出来たと思います。この企画、実際に展示してから非常にいい事だと思いました。これからも続けて下さい。応援しています。

【4回目:参加アーティストの声】加藤恵さん

プロフィール

2000年九州産業大学大学院芸術研究科美術専攻修了。混沌とした時間の中にある実感できる「今」をテーマに銅版画(凹版画)をはじめ、版画技法を用いて制作しています。版画は、版や紙のサイズ、色、プレス機など表現にある程度の拘束がありながら、版画特有の質感や素材感は強く訴えかける資質は、私の作品をよりリアルに表現する方法と言えます。拘束の中から常に自由を求め、新しい表現を追求していきたいと考えています。               https://artistdb.artistcafe.jp/katoumegumi/
https://www.instagram.com/p/DA2QZ4oSa24/?img_index=1


現在展示中ではありますが、クロスライフの皆様、アーティストカフェの皆様には大変お世話になっております。私の方での要望に対しての即対応いただくなど、初めての環境での展示の中、心強く感じています。ホテルのフロントでの展示は「出会い」だと思いました。ホワイトキューブでの展示が多く、ギャラリーでの展示も自身の世界観を空間で表現してきました。(それも大切)しかし、今回の展示では、展覧会を目的とする方の他、宿泊されるお客様、たまたまホテルに用事で来られた方等、普段、出会う事のない方にも観覧(体験・実感?)できる空間だと思いました。私自身、作品と観覧する側との距離感、空間について考える事がありますが、今回の企画も新しい距離感と空間についての発見があると実感しています。また、リーフレットの内容についても丁寧に対応いただき、こちらの要望にも答えていただきました。海外のお客様対応のための英訳も素晴らしいと思います。

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