2025年4月24日（木）から5月25日（日）まで、Artist Cafe Fukuoka主催による2つの展覧会を開催しました。
ギャラリーでは、再生銀を用いて素材の循環と時間の蓄積を表現した福村龍太氏と、多文化の融合を身体的感覚とともに彫刻作品として立ち上げた野口寛斉氏、2名の陶芸家による展示を実施。
現代社会と真摯に向き合い、自らの素材を見つめ直すことで生まれた作品群が、来場者に強い印象を残しました。
両者にとって初のマッチアップ展示は、多くの反響を呼びました。

出展アーティスト

福村龍太 / Ryuta Fukumura

福村⿓太は福岡県うきは市の「⽇⽉窯」の⼆代⽬である。そして自身の新しい表現として銀彩を探求している。銀は⼟とは違い、質や産地の違いがない世界的に統⼀された素材。しかし、今回福村が使⽤する銀はこの日本でPCやスマートフォンなどの⼩型家電をリサイクルし、再⽣させた銀である。現在、地球に存在する銀の総量はおよそ140万トン。そのうち100万トンが既に掘り起こされているという。残りをあと20年程度で掘り尽くしてしまう。近い未来、天然の銀山はなくなる。身の回りの銀を使用している製品から変換するしかないのだ。

福村は、⼈の⼿が⼊ったモノが⻑い年⽉をかけて変化する過程が、好きだと⾔う。それは人工物の自然美とも言えよう。都市に眠っていた銀は今、福村の作品として顕在化された。どうかこの作品たちは、自然美が宿り骨董品となる時まで、楽しんで頂きたいと思う。

2010年　九州造形短期大学　陶芸コース研究院　修了
2010年　実家である日月窯の二代目として作陶開始

野口寛斉 / Kansai Noguchi

プロの音楽家としてアメリカで活動していた野口寛斉は32歳でIsamu Noguchiの作品に出会い、音楽に区切りをつけます。そこで自らのルーツと向き合った野口は帰国し、彫刻や陶芸を学びます。野口の作品からは、多様な文化の融合を感じます。興味深いのは、制作の上で彼がそれを意識的に行なっている点です。

「縄文土器、李朝、古代ギリシャ彫刻がもつ素朴さと、抽象的表現の相性を、私は探す。人々は日常の中でも無意識に想像し、頭の中で組み合わせては解き、また別のものを組み合わせながら答えを探っている。」

野口は様々な組み合わせを緻密に実験しながら、時には即興的な身体感覚にも身を任せ、まるで作曲するように作品を生み出しています。それは極めてコスモポリタン的な、人種、文化、歴史を俯瞰した調合作業でもあります。オリジナルが出尽くしたと思えるこの現代で、まだ見ぬ新たな文明を求めるような彼のアプローチにご期待頂きたいです。

1982  福岡に生まれる
2009  プロミュージシャンとして活動開始
2013  渡米
2014  イサム・ノグチ作品に出会い、音楽に区切りをつける
2015  彫刻家の元で造形を学ぶ。独学で作陶を始める

本展示について

Artist Cafe Fukuokaは、福岡から地域と世界をアートを介して交流することによって、新たな価値を創出しアートが循環する社会へのきっかけが生まれる場として運営されています。アートを通じて地域と世界、個人と社会などを結びつける場として、多様な表現と対話が生まれる土壌づくりに取り組んでいます。

今回の展覧会では、再生銀を用いた陶芸により素材の循環と時間の蓄積をかたちにする福村龍太氏、多文化の融合を身体的感覚とともに彫刻作品として表現する野口寛斉氏、そして、自然の中に流れる時間や記憶を手がかりに、個と世界の関係性や記憶と存在に触れるインスタレーションを展開する穴井佑樹氏の作品が一堂に会します。

私たちが生きる世界の資源の有限性や多様な背景を見つめ直し、未来へ向けた創造的対話を促す本展は、「アートと社会を繋ぎ、新たな想像力を育む拠点」という当施設の理念や存在意義を体現するものです。それぞれのアーティストの作品を通じて鑑賞者一人ひとりが、この福岡の地から未来の社会に問いを投げ、対話を深めるきっかけとなることを目指しています。この場所から広がる対話と創造の波紋が、より豊かな社会を福岡から築く一助となることを願っています。

開催概要

[アーティスト]
福村龍太×野口寛斎
[会期]
2025年4月24日（木）〜5月25日（日）
月曜休館 ※5/5（月）は開館、5/7（水）は休館
[開催時間]
平日：12:00〜17:00
土日祝：11:00〜19:00
[会場]
ギャラリー
[主催]
Artist Cafe Fukuoka
[協力]
KOGEI Next、KANEGAE